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2023.12.25倉石 友美
部下の自発性の基礎は「自己効力感」
自発的に考え、行動しても無駄だ、ということを
上司とのかかわりの中で部下が学習してしまう、という話です。
今回は「学習性無力感」の反対の「自己効力感」についてお伝えします。
部下に自発性を期待するのであれば、
まずこの自己効力感を持ってもらうことがベースとなります。
自己効力感とは、自分に対する信頼感や有能感のことです。
目標を達成できるという自信、
自分が組織に貢献できている感覚。
そういったものを指します。
自己効力感を持てておらず、自信のない状態のまま
自発性を持たせるのは非常に難しいと言われています。
自信がないと怖くて動けないからです。
では、現在自己効力感が低い部下に、
自己効力感を持ってもらうためには何が必要か。
一つ目は、成功体験。
二つ目は、言語的説得です。
具体的な成功体験を積ませたうえで、
「君ってやっぱりこういうこと得意なんだね!」と
本人に能力があることを気付かせる、ということです。
一つずつ解説していきます。
成功体験について大切なことは、
「上司が成功体験をプロデュースする」ということです。
放っておいたら勝手に成功体験を積んでくれた…
そんな部下であれば苦労しません。
上司がプロデュースするのです。
具体的には、達成すべき目標を本人と一緒に設定したら、
それに到達するためのステップ=小目標を具体的に設定します。
小目標は、「行動しさえすれば達成できる」ものが良いでしょう。
そして小目標を達成するごとに褒め、
次の小目標に向かわせるよう励まします。
こうして小目標の達成という成功体験を積ませるとともに、
達成のたびに褒め、
さらに次の小目標達成へ、と導いていきます。
そしてもう一つ、言語的説得によって、
部下本人のセルフイメージをポジティブなものに変えていきます。
一つ、面白い実験があります。
——
小学校のクラスAにはこう伝えました。「算数の勉強は大事だからやりなさい」
クラスBにはこう伝えました。「君たちには算数の才能がある」
どちらのクラスが、算数の成績が上がったでしょうか?
また、クラスAには「しっかり掃除をしなさい」と伝え
クラスBには「君たちほどきれい好きなクラスは見たことがない」と伝えました。
どちらのクラスが、より熱心に掃除をしたでしょうか?
——
お分かりのように、どちらもクラスBですよね。
これは「自己成就的予言」と呼ばれる現象です。
人間は「こうしなさい」と指示・命令されるよりも、
「あなたはこういうことができる人間なんだ」と
セルフイメージを変えられた方が、
その方向に向かって動く可能性が高くなる、ということです。
部下育成においては、
小目標の達成という具体的な成功体験と共に、
「君ってこういうことが得意なんだね」
「君のこういう仕事ぶりにセンスを感じるよ」
「君はこういう才能がありそうだ」
と伝えることで、「自分はこれができる」というセルフイメージを持ってもらいます。
成功体験という根拠があるため、
この新たなセルフイメージを受け入れやすいのです。
このようにして、部下の自己効力感を育むことが、
自発性を引き出す基礎となります。